アヒルのガー君。

 彼(私は彼をオスだと決め付けていました)は
他人の飼いアヒル

多分ご主人様から名前も付けられていた事でしょう。

しかし、私は彼をガー君と呼んで意思の疎通を図って
おりましたね。

それには理由があります。

と言うのは彼との初対面のおり、私は彼にガー君と
声をかけると、ガーガーと鳴きながら愛嬌のある尾を

振り、接近してきたからなのです。

バリ、人なつっこい彼でした。


季節は夏でした。

大き目のタライに水がはってあり、水鳥ガー君の憩いの
ひと時を少しでも演出してあげようとする飼い主の

ささやかな愛情が彼のその姿と相まって、何となく
ホノボノとさせてくれたものでした。

彼との何度かの対面があってからしばらくして、
大雨が降った後、彼が行方不明。


次の朝。近くの河川でアヒルが川面を気持ちよく
泳いでいました。

私が声をかけてみたら、かのアヒル君こちらを見たような
気にしたような。

飛べないアヒルは、地上との段差が4mほどあるその河川
からは、容易に近寄る事は出来ません。

彼は困っている様子もなく、声をかける前の仕草に戻り、
河川を下っていきました。

都会の薄汚れた街中での出来事です。