蒙古の牧羊犬。
古来、モンゴル高原では遊牧以外の生活手段はなかった。
厳しい自然がそれを余儀なくさせているのだ。
つまり土を下手にほじくると、そこには再び植物が生えなくなる。
乾燥した強い風と標高のあるその土地では日本では想像できないほど
の厳しい自然の摂理が地平線の彼方まで充満している。
必然、遊牧になる。しかも単に放牧ではいけない。
一ヶ所に長期間の滞在は自然破壊につながるからだ。
家畜も限定される。
牛では遊牧は速度に問題があり、羊なら具合がよいと。
単に羊だけだと、これまた一ヶ所の草を食い尽くすまでじっとする事
がある。そこで山羊を混ぜる。
山羊は歩行しながら草を食む、羊は移動する山羊を追って一緒に
移動する。
モンゴル高原を旅するときには、注意しなければならない事がある。
それは、牧羊犬。
縄張り意識と上下関係に厳しく、よそ者は先ず敵と認識する。
狼相手の彼らは必然、獰猛が基本。
で、どのように注意するのか。
接待を受ける事になった遊牧家族の客人となり、広々とした大地で用
を足さなくてはならないのだ。
牧羊犬はそれを食って始めて同胞である事を認識する。
風土の違いや環境は、彼等に接する掟を知らないととんでもない事に
なるという。